国立現代美術館ソウルは、何もなかった土地に新築だけで完成した文化施設ではない。日本統治期に病院として建てられた赤レンガ建築、軍関連施設、旧機務司本館の痕跡を残し、その間に新しい展示空間を配置した。観覧動線は作品を見る道であると同時に、国家権力がこの敷地をどう使ったかを読む道でもある。
赤レンガ建築には近代病院の時間が残る
敷地の近代建築は医療施設として始まり、解放後には国軍ソウル地区病院として使われた。病室や廊下、診療のための構造は文化施設への転換によって用途を変えた。古い外壁を魅力的な背景として見るだけでなく、患者と医療従事者が行き交った実務施設だったことも記憶する。
機務司は市民に近い都心にありながら、閉ざされた機関だった
国軍機務司令部は軍保安、防諜、情報業務を担い、その歴史は権威主義期の民間人監視や政治介入の問題とも切り離せない。景福宮のすぐ隣にありながら、一般市民には近づきにくい場所だった。美術館への転換は閉鎖的な国家空間を公共文化空間へ変えたが、新しい用途が過去を自動的に消すわけではない。
低い建築と複数の中庭が宮殿周辺の景観に応える
2013年開館のソウル館は巨大な一棟を建てず、低い展示棟を分け、中庭と路地のような空地でつないだ。景福宮と北村の間で高さを抑え、既存建築をともに使う選択である。無料の外部空間、有料展示区、保存建築では立入範囲が異なるため、現地案内に従う。